きみに、好きと言える日まで。

あたしじゃない誰か




「ねえ、あたし達って腕上げたと思わない?」



いつものように練習に励む放課後。


素振りをしながら、凛ちゃんが言う。



「うん、言えてる」

「やればできる子だったのよね、あたし達」



今まで部活半分、よそ見半分だったけど、今は部活だけに集中しているから。


授業が終われば逃げるように部活へ向かう。

耀くんのいない陸上部を、もう見ることはない。

部活の帰りに偶然耀くんに会うこともない。


今は、学校にいる時間の中でこの瞬間だけが気持ちが安らぐとき。



「来年のインハイも夢じゃないかもっ!」



凛ちゃんが、カッコよくラケットを振り上げる。



「それは言いすぎかな」



大きすぎる夢に笑って打ち返した。

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