きみに、好きと言える日まで。
「もー、まひろったら現実見すぎー」
ぷーっと膨れた凛ちゃんからは、特大のスマッシュが切り返され、
「おっと」
「ごめーん!」
勢いづいたボールは、大きくバウンドしてあたしの頭上を大きく超えていった。
校庭に背を向けていたあたしは、追いかけたボールを手にした後、何気なくグラウンドに目を走らせて……。
───ドクンッ。
久々にあたしの鼓動が何かを察知した。
……どうして?
いるはずのない耀くんが、ジャージ姿でグラウンドの隅に立っていたから。
釘付けになるあたしの視線。
「あー、耀太ね……またハイジャン始めたみたい」
固まっている背中に凛ちゃんの声。
少し遠慮気味に。
あたしと耀くん、そして広瀬さんの不思議な仲に、凛ちゃんから最近耀くんについて触れられることはなかった。
真実を知らない凛ちゃんは、病院で出会ったというあのウワサを鵜呑みにしている。
気を使ってくれているんだと思う。