きみに、好きと言える日まで。
偽りの唇
【耀太】
部活を終えると、昇降口の前に紗衣が立っていた。
待ってるのは俺……?
気づいているのに、気づかない振りをしながら靴を履きかえた俺に。
「耀くんっ」
……だよな。
軽く息を吐いてから話し掛けた。
「迎え、どうしたの?」
帰りは車が来るはずなのに。
感情を悟られないようにそう聞く。
感情を殺して、自然に笑うことも板についた。
「一緒に帰りたくて待ってたの」
「……そう……」
無邪気に笑う彼女から、思わず目をそらしてしまう。
そのとき
「まひろー、置いてくよ」
「あ、待ってー!」
テニス部仲間に少し後れをとったまひが、小走りに駆けてくところで。
聞えてきた声に、無意識のうちにその声を辿っていた。
首元のマフラーを握りしめながら、少し赤い顔をして。
口元からは、小さく白い息が漏れている。