きみに、好きと言える日まで。
11月。
すっかり季節は秋に変わった。
先が見えないほど続く銀杏並木。
木々の葉は色づき、風に舞った葉っぱが足元を邪魔する。
学校の話や部活の話。
普通の恋人達がするような会話を、当たり前のように口にする。
"契約"に基づいた関係だとは、ハタからは到底見えないだろうな。
負い目を感じているという俺の気持ちを除けば。
不意に、紗衣が立ち止まった。
「耀くん、キスして」
「ここで?」
「ええ、ここで」
「…………」
紗衣と向かい合い、俺は彼女の肩に手を掛ける。
ゆっくり体を近づけていく。
だんだんとシルエットが重なり……。
淡いピンクの口紅のついたその唇に、そっと触れた。
「ファーストキス」
「え?」
紗依の人差し指が、俺が口づけた唇をそっとなぞる。