きみに、好きと言える日まで。


「美月~」



そのとき。


テニス部が終わるのを待っていたのか、拓弥くんがネット越しに美月ちゃんに声をかけた。



「今日なんか食ってかね?」

「またぁ?太るからイヤ!」

「どこが?むしろ太ってくれていいよ~」

「バカッ!変態っ!」



美月ちゃんのおなかをつまもうとして、怒られてる拓弥くん。


でも、結局最後はふたりでケラケラ笑い合う。



……いいなぁ。



美月ちゃんといると、拓弥くんはずっと笑顔が絶えない。

体中から"好き"が出てる。



堂々と愛せて羨ましいな……。


あたしは、好きでいることさえ許されないのに。




高校に入ったら、彼氏と一緒に帰るのが夢だったんだよね。


街をぶらぶらデートして歩いたり……。


そのために電車通学を選んで。



ははっ。


2年前の可愛らしい空想を思うと、この現実がなんだか笑えてくる。


膝を抱えて、丸くなっていると、



「まひろ~」



凛ちゃんがあたしの鼻をつまんだ。



「ここはひとつ女同士、甘いものでも食べに行きますか!」

「うん!」



ニコッと笑ってあたしは元気に立ちあがった。


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