きみに、好きと言える日まで。
「最近、羽鳥もよく笑うようになったな」
独り言のように出た拓弥の言葉に、俺も無意識に頷いた。
練習を終えたのか、体育座りをしているまひの横で、紺野がちょっかいを出している。
「やめて」とでも言っているんだろうか。
手で阻止するまひからは、白い歯が覗いた。
もう、あのことは。
……忘れてくれたのか?
辛そうな顔を見せる度、俺は胸が痛んだ。
それでもどうしてやることも出来ずに
『早く忘れろ』
そればかり願っていた。
だからまひが笑顔でいてくれることは、何よりも気持ちが軽くなる。
なのに。
俺は、あの夏で時が止まったまま───
「人生にはさ、ほとぼりってものがあるだろ」
コートに視線を向けたままの俺の肩に、拓弥が手を乗せた。
「あ?」
「もういいんじゃねーか?お互い気に病んで心配しあってるくらいなら、いっそのこと思ってること全部口に出せよ」
それは、拓弥が久しく口にしなかったまひのことだ。