きみに、好きと言える日まで。


「……今更蒸し返してどうする。忘れてくれたならそれでいいだろ。時間が経てば自然に……」

「時間が解決するとか、言わなくても分かるとかっつーのは、逃げだからな」



見透かしたような流し眼が注がれた。



「……っ……」

「意地張ってると、ロクなことないぞ」

「どうして俺がまひに意地張んなきゃいけねー?」

「羽鳥じゃない。おまえが意地張ってんのは、広瀬にだろ」



痛いところをつかれた。 


けど




「……意地じゃねーよ……」



…意地なんかじゃ。



まひを忘れるためにとか、意地で付き合ってる方がどれだけ楽か。


そうじゃない俺にとって、それを言われてもツライだけだ。


弱く言葉を落とした俺に、



「……悪かった……」



素直に謝る拓弥。そして



「マジで……羽鳥とのこと、このまま終わらせていいのか……?」



心配してくれてんのは、本当に分かる───



「拓弥。終わるも何も、俺達は始まってないんだ」



けど。

そこんとこ誤解しないでくれよ。




"好き"だと告げたわけでもない。


それは、もう伝えられない言葉。




「だってキス……」

「拓弥、それ以上言うな」



……苦しくなるから。



見えるところで笑っていてくれれば、それでいいんだ。





もうすぐ、一日が終わる───……

< 285 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop