きみに、好きと言える日まで。


ふいに視線を感じて目線だけ動かすと、

そのすぐ50センチ脇、俺を見つめる紗衣と目が合った。


ニコリと微笑む紗衣。



「……っ」



咄嗟に俺はノートに視線を戻して、シャーペンをクルクル回した。



俺は黒板を見ていただけだ。


まひなんか見ていない。


やましいことなんて一つもない。


そう自分に言い聞かす。



それなのに、手のひらにはジワリと汗が噴き出した。


紗衣の視線を感じて回す手元を止められない。


顔も上げられない。




コロン……。


手元が狂って、シャーペンが床に落ちてしまった。


< 303 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop