きみに、好きと言える日まで。


慌ててそれを拾おうと手を伸ばした時



「先生っ!」



誰かが声を上げた。


指先にシャーペンを挟みながらその流れで顔を上げると、床に倒れている紗衣の姿が目に入る。



「広瀬、大丈夫か!」



先生が慌てて駆け寄り、クラスメイトも騒然として紗衣を取り囲んだ。



どうしたっ……!?


俺もシャーペンを投げ捨て、側へ寄った。




「しっかりしろ!」



先生が呼びかけても反応がない。



「俺が……」



声を掛けたのは偽善なのか?


本気で、心配しているのか……?



「俺が保健室へ連れて行きます」



これが、もしまひだったら……?



……冷静でいられる俺は、やっぱりただの偽善者なのかもしれない。

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