きみに、好きと言える日まで。




「脈も呼吸も落ち着いてるから大丈夫よ。疲れかしら」



保健医はそう言うと、眠っている紗衣のベッド脇のカーテンを静かに閉めた。



「広瀬さんて家遠いんだっけ?」

「はい。でも毎日迎えの車が来てます」

「あらそう。なら安心ね」



今は6時間目。

これが終わったら、いつものように迎えが来るから大丈夫だろう。



俺が校門まで送り届ければいいか。


そう思い、教室へ戻ろうとすると



「あっ、そうそう。私用事があるからちょっとお願いね」



保健医はそう言い残し、ここを出て行ってしまった。





「……さて、どうするかな……」



保健医が不在になって、俺は教室へ戻ることも出来なくなってしまった。



そっとカーテンを開き、そこから見える紗衣の寝顔を眺めた。


綺麗な顔をしている。

住む世界も違うし、本当だったら俺なんかと出会うはずもなかった人。


< 305 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop