きみに、好きと言える日まで。
「脈も呼吸も落ち着いてるから大丈夫よ。疲れかしら」
保健医はそう言うと、眠っている紗衣のベッド脇のカーテンを静かに閉めた。
「広瀬さんて家遠いんだっけ?」
「はい。でも毎日迎えの車が来てます」
「あらそう。なら安心ね」
今は6時間目。
これが終わったら、いつものように迎えが来るから大丈夫だろう。
俺が校門まで送り届ければいいか。
そう思い、教室へ戻ろうとすると
「あっ、そうそう。私用事があるからちょっとお願いね」
保健医はそう言い残し、ここを出て行ってしまった。
「……さて、どうするかな……」
保健医が不在になって、俺は教室へ戻ることも出来なくなってしまった。
そっとカーテンを開き、そこから見える紗衣の寝顔を眺めた。
綺麗な顔をしている。
住む世界も違うし、本当だったら俺なんかと出会うはずもなかった人。