きみに、好きと言える日まで。




20分後。




……いた。



夕日の見えるあの橋に。



この場所は、紗衣には教えていないのに。




俺は最近、ここへ通っていた。

後をつけて来ていたんだろうか。


外灯も何もない橋の上は真っ暗だった。


見慣れた夕日はあるわけもなく、見えるのはぽっかり浮かぶ満月。


手摺に体を預けて、紗衣はそれをぼんやり眺めていた。


橋の手前に自転車を止めて近寄る。

紗衣の少し後ろで足を止め、俺も月を見上げた。




そのときだった。



「……ッ……」



一瞬の出来事だった。


微動だにしなかった紗衣の体が、突然宙に浮いたのだ。



「紗衣っ……」



俺は走り出し、その体に手を伸ばした。

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