きみに、好きと言える日まで。


いつの間にか周りの喧騒は消えていて、ここには俺達ふたりだけになっていた。


伸びるふたつの影を見ながら問いかける。



「……いつまで、そこで暮らすの……?」

「とりあえず、高校を卒業するまではいようと思う。その先は……まだ分からない」

「そう……」

「耀くん、もう自分を責めないで。あれは……不慮の事故だったの……」

「紗衣……」

「いいの。こんな姑息なやり方で耀くんの心を縛っても、自分がみじめになるだけだってやっと気づいた。この数ヶ月……こんな自分が嫌いで仕方なかったっ……」

「…………」

「八神先生も一生懸命診て下さっているし、夏休みには形成手術もあるわ。腕だってリハビリでほら、こんなに伸びる様になったの」



紗衣は、まだ完全に伸びきらない腕を、俺に向かって一生懸命伸ばした。



「…………」



涙が出そうになった。

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