きみに、好きと言える日まで。




夏休みに入った初日、あたしは進路指導室にいた。


色んな資料や過去問などがあって、夏休みも好きな時に出入りできる。


前々からゆっくり資料探しがしたいと思っていて、涼しい時間に……と、朝一で訪れたんだ。



さすがに初日から来る人はいないのか、貸切状態。



幼児教育科のある短大の本。

幼児教育関連の書物。


それを読もうと本棚に手を伸ばす。




グラウンドからは、相変わらず賑やかな声が聞こえていた。


陸上部も3年生は引退。


けれど、インハイに出場する耀くんと拓弥くんだけは、毎日グラウンドで汗を流しているみたいだった。



夏休みに入る前、体育館で壮行会が行われた。

耀くんはキラキラ輝いていて、あたしにはもう手の届かない人だと思った。




広瀬さんと別れても、耀くんはずっと跳び続けていた。


別れの理由、これからのふたり、詳しいことは分からないけど、きっと耀くんは広瀬さんの為にハイジャンを続けているんだよね……。



跳ぶ姿を見る勇気は、まだもてない。

でも、胸の中にしっかり記憶されているから。


あたしは、それだけでいいんだ……。

< 346 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop