きみに、好きと言える日まで。
夏休みに入った初日、あたしは進路指導室にいた。
色んな資料や過去問などがあって、夏休みも好きな時に出入りできる。
前々からゆっくり資料探しがしたいと思っていて、涼しい時間に……と、朝一で訪れたんだ。
さすがに初日から来る人はいないのか、貸切状態。
幼児教育科のある短大の本。
幼児教育関連の書物。
それを読もうと本棚に手を伸ばす。
グラウンドからは、相変わらず賑やかな声が聞こえていた。
陸上部も3年生は引退。
けれど、インハイに出場する耀くんと拓弥くんだけは、毎日グラウンドで汗を流しているみたいだった。
夏休みに入る前、体育館で壮行会が行われた。
耀くんはキラキラ輝いていて、あたしにはもう手の届かない人だと思った。
広瀬さんと別れても、耀くんはずっと跳び続けていた。
別れの理由、これからのふたり、詳しいことは分からないけど、きっと耀くんは広瀬さんの為にハイジャンを続けているんだよね……。
跳ぶ姿を見る勇気は、まだもてない。
でも、胸の中にしっかり記憶されているから。
あたしは、それだけでいいんだ……。