きみに、好きと言える日まで。


「だから、頑張って。
まひならきっと、いい先生になれる」



日焼けした顔から零れる白い歯。



「……っ」



安易に使いたくないと思っていた"頑張って"


誰でも使える一番単純で簡単なエール。


だからこそ去年の夏、リハビリを一生懸命頑張っている耀くんには一度もその言葉を掛けなかった。



……だけど。


それは、あたしの心が歪んでいただけだったのかな。



余計なことなんて考えないで、本当に相手を応援する気持ちがあれば自然と出てくる言葉。


そして受け取る側の心が真っ直ぐだったら、それは勇気になり、力となる。



……だって、いま、あたしものすごく嬉しいから。


頑張れってエールが、心を震わすほど嬉しいの……。



胸の中には温かいものが流れてる。

じわりじわりと、胸の中すべてを満たすように。



この言葉がこんなにも嬉しいものだなんて、あたし、知らなかったよ。



「ありがとう……」



耀くんからの"頑張って"


それを、大切に大切に胸の奥へしまった。

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