きみに、好きと言える日まで。
「じゃあ……耀くんは、推薦だよね?」
耀くんの手の上に広げられていた、大学の本を見つめる。
「ああ。声掛けてもらっている大学があって。ちょっと調べてみようと思って……」
「S大……?」
それはオリンピック選手を多く輩出している、日本屈指の陸上名門大学だ。
「ああ。多分決めると思う」
耀くんは、パタンと本を閉じた。
こんな風に穏やかに話せるのが不思議だった。
今度こそ本当に、元のあたし達には戻れない、そう覚悟していたから。
あの日に気持ちをぶつけあったあたし達じゃない。
全て洗い流して、出会ったころの様に純粋に向かい合えている。
ただ、ここに偽りの気持ちがあるとすれば。
好きと言う気持ちを抑えていることだけ……。
「……あのお守り……」
その時
耀くんがふいに出した言葉に。
「えっ……」
あたしは耳を疑った。