きみに、好きと言える日まで。


決勝に登場した拓弥くんは、去年よりも順位を落としてしまった。


涙はなかった。


スタンドの仲間に深々と一礼した拓弥くんは、すがすがしい笑顔に溢れていた。


声を上げながら涙している美月ちゃんの肩を、優しく撫でていたのは凛ちゃん。


同じく肩を震わせて、静かに頬を濡らしながら。


その涙は、とても綺麗だった。







「いよいよだね」



プログラムを見れば、もう少しでハイジャンの決勝。


耀くんの高校生最後の試合。


凛ちゃんの言葉が、より一層緊張を高めた。



「あたし、トイレ行ってこようかな……」



そわそわして、いてもたってもいられない心を、凛ちゃんは見透かしていたみたい……。


温かい手で、落ち着かないあたしの手をそっと握ってきた。



「まひろ……」

「…………」

「ちゃんと見届けよう?」



手に力が加わる。



「強く、大きく成長した耀太」

「…………」

「いっぱい挫折があったけど、結局この場所に立ってる。始めから耀太は、ここへ来る運命だったんだよ」




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