きみに、好きと言える日まで。


耀くんのハイジャン人生は、決して平坦じゃなかった。


才能があるのに、あと一歩のところで手のひらから零れて行く栄光。


悔し涙なんて、あたしの想像じゃ及ばない。



「この場所が、耀太を選んだの」

「……凛ちゃん……」



2度の怪我を乗り越えた奇跡のジャンパーは、この大会で一番の注目を集めていた。


高校記録が生まれるかもしれない、そんな期待から記者たちもカメラを構える位置取り争いに忙しい。


多分、今日も朝からずっと記者に追われていたんだろうな。



「今日の耀太、きっと誰よりもカッコイイ」

「……そのセリフ、あたしの……」



ちょっと妬けた。

思ってることも全部言われた。

だから、素直にそんな言葉が口から出た。



「ははっ、そうそうその調子!!」



すっかりハメられて、つい本音が出たあたしを凛ちゃんが笑った。

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