きみに、好きと言える日まで。
今年の春。
クラス分けで、俺の真横に書かれていた名前に目を奪われた。
【羽鳥まひろ】
忘れかけていたあのことを、思い出した瞬間だった。
───"羽"が生えている……。
───"鳥"みたいだ……。
……しかも隣かよ。
どんなヤツだ……?
椅子を引きながら声を掛けた。
『アンタいい名前だね』
皮肉のつもりだった。
"羽鳥"だなんて。
……トラウマだ。
『そんなこと言われたの初めてです……』
少し栗色のふわふわした髪の毛が揺れる。
彼女が俺を見上げた。
『……っ』
心臓が止まりそうになった。
グラウンドで。
ダッシュを終えた俺が目を向けた先。
そびえ立つハイジャン。
その延長上。
いつの頃だったか、テニスコートから、バーの方をいつも見つめている女子がいることに気づいた。