きみに、好きと言える日まで。


小さい子の前であんな言い方。


……高校生にもなって、まったく。


キャッチボールをしているさっきの先輩を軽く睨むと、女の子の目線まで屈んで頭を撫でた。


女の子は言う。



「お兄ちゃんは、あんな風には怒らない」



やっぱり誰かの妹なんだ。



「優しいお兄ちゃんなんだね」

「うん!」



目には涙を浮かべたままだったけど、満面の笑みになった女の子がすごく愛らしくて、ギュッと抱きしめた。



でも。



「イタタタ……」



すっぽ抜けた球でも硬式球。


それが直撃した右腕はジンジンと痛みを伴っていて、あたしはその場にうずくまった。


テニスボールを顔面に受けた痛みの再来だ。


あたしって、球に運がないのかなぁ。



「ユウヒ!!!!」

「おにいちゃん!」



その時。

女の子のお兄さんが現れたみたいで、お互いに呼び合う声が聞こえた。

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