唯一の愛をキミに【完】
昔、由香里から犬猿の仲だという男性モデルがいるという話しを聞いたことがあった。


由香里が好きな俺は本城の話しを聞いて、そいつまでもが由香里を好きだったら…と考えていたことがあったから名前は覚えている。


『ワタル、唯ちゃんの昔馴染みなんだって。唯ちゃんは高井って呼んでた。モデル仲間からあいつが母子家庭で育ったって聞いたことあるから、だから苗字が違うと思う』


「なるほど…。世間は狭いな」


『本当だよ。とりあえず、ワタルが何か動いたらすぐに哲に知らせるよ！』


「あぁ、いろいろと悪いな」


由香里は「いいって、いいって！」とゲラゲラと笑いながら電話を切った。


電話を終えて唯の元へ行き隣に座り優しく肩を抱き寄せる。


「電話…由香里さん？」


「あぁ、もう撮影も終わって今家に着いたって。唯のこと心配してた」


「本当？怒ってなかった？」


心配そうにする唯の不安を少しでも取り除くために俺は笑顔で頷いた。


「怒る？その逆。ゲラゲラ笑ってたよ。スカッとしたって。唯に感謝してた」


唯の横顔にかかる髪を耳にかけてやり、その横顔を見つめる。
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