唯一の愛をキミに【完】
「そいつ、この前軽井沢で唯が話してたガキ大将なんだろ?」


そう尋ねると唯は力なくコクリと頷いた。


小学生の唯を泣かせていた男共の主犯格。


たぶん、唯や由香里の話しを総合して考えると唯のことが好きだったんだと思う。


好きな子ほどいじめたくなるタイプ。


俺には理解できないけれども。


「生れてはじめて人を叩いたの…」


「ごめんな、俺のせいで。こんな小さな掌で、痛かったよな」


事の発端は本城が唯に俺のことを悪く言ったから。


唯は自分が傷付くことより、俺のことを悪く言われたことの方が耐えられなかったんだろう。


「大丈夫、唯のことは俺が守る」


そして、そっと唯の掌を包み込むように握った。


「言ったろ?唯を守った藤堂さんが羨ましいって。今度は俺に唯を守らせて」


過去にできなかったこと、今ここで。


「ありがとう」


ようやく唯は安心したかのように優しく微笑んだ。


ドクンと気持ちが高鳴った。
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