唯一の愛をキミに【完】
本城を目の前にして、本城を力いっぱい睨みつける。


本城は俺の睨みなんか気にも止めずにヘラヘラと俺たちの元に近寄ってくる。


「唯、まだ帰ってなかったんだ?張ってて正解だな。ラッキー」


張ってただと?昨日引っ叩いた唯への腹いせか?


「高井くん、なんでここが…?」


「俺のファンの子から情報聞いて。一条とそこにいる唯の彼氏?ここの大学じゃすごい人気者みたいだね。ベラベラ喋る子だったから、すぐにわかったよ」


何の用で来たのかわからず不安な表情を見せる唯を本城から隠すように唯の前に立つ。


「昨日は俺の彼女が叩いてしまったようで、悪かったね」


「いや、俺も言いすぎたし。おあいこってことで仲直りしに来たんだよ」


仲直りだと?…絶対に何か裏がある。


「じゃあチャラってことで。…これ以上唯に近づくな」


自分でも驚くほど威嚇するように低い声が出た。


唯の手を引いて本城の横を通り過ぎたとき、


「俺、唯のことが好きなんだ」


ヤツはとんでもない言葉を言い放った。


俺がついさきほど気付いた気持ち。


まだ唯に伝えてない想い。


あろうことか、俺より先に、しかも簡単にそれを口にしたんだ。
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