唯一の愛をキミに【完】
その感情を表に出さないように、何てことないようにそっと唯の前に手を差し出す。


すると唯は一瞬固まったがすぐに意図がわかり恐るおそる俺の手を握り返してきた。


「じゃあ、行こうか」


「…はい」


ぎこちなく返事を返した唯の手は小さくて暖かくて、なんだかとても心が安心するんだ。


チケットを受付カウンターで提示すると案内係の人から人気の大水槽の前で記念撮影の説明を受ける。


「記念に一枚、どうですか?」


写真とかはあまり好きじゃない。


充たちとの写真は別だけど、今まで彼女と写真はあまり撮らなかった。


それは俺自身がその出来事、いや彼女という存在を記録に残しておきたくなかったんだと思う。


だけど、唯との思い出なら残してもいいと思ったんだ。
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