正しい君の忘れ方
何度か電車を乗り換えて
何度かバイト仲間に手を振った。
気付くと残ったのは
声の素敵な彼と2人だった。
黄色い電車は景色を流して
私たちを最寄りまで運ぶ。
「あの…私も名前教えて欲しい」
「あ、ごめん河野さん。オレ伊藤!」
「伊藤君。おっけ。…あと星野ね^ ^」
名前覚えるのが苦手とかいうレベルじゃ
ない速さで忘れられて苦笑した。
私はふんふんと2回ほど頷いて
また外を見る。
窓の外がいつもより
少しキラキラして見えたのは
さっきまで降っていた雨のつぶが
反射しているだけじゃないことに
このときはまだ気付いていなかった。