正しい君の忘れ方
伊藤くん…。
知り合いだとわかった途端安心して
肩の力が抜けた。
「あ!すいません!下の名前聞いてなかったので…」
「あっ、そうかそうか。ごめんね!浩太って言うんだよ」
素敵な声の伊藤くんは
伊藤浩太という名前だった。
どうやらバイトのグループから
追加したのだという。
何にせよ不審者じゃなかった事に
ほっとして、家に着くまでの帰路を
伊藤くんとのLINEで埋めた。
駐輪場の自分の自転車が倒れていたのも
エレベーターに大嫌いな蛾が
止まっていたのも
なにも気付かなくなるくらい
他愛のない話に夢中になった。
そんな時
「ていうかさ、高校。同じだよね?」
私は全身の毛穴という毛穴から
冷や汗が吹き出すような
感覚に見舞われた。
「えっ?!ほんと?!青高??」
「そうだよw俺も青高」