花盗人も罪になる
「今朝ひどいこと言って泣かせてしまったんですけど……妻は何も言わずそのまま同窓会に行くために出掛けてしまって」
「腹が立つ気持ちはわからなくもないけど……そこは村岡主任の方から謝ってください」
「そうします」
そう言って逸樹は照れくさそうに笑った。
香織はその照れ笑いを不思議な気持ちで見ていた。
奥さんを傷付けてまで逸樹を奪いたいとは思わない。
むしろ、逸樹が奥さんをとても愛していることにホッとした。
愛する人にこんなふうに愛されたらお互いきっと幸せだ。
そんな気がした。
りぃと夢中で遊んでいた希望が、逸樹の方を向いてお腹を押さえた。
「いっくん、ののお腹すいた。グーって鳴ったよ」
「そうか、もうそんな時間なんだな」
逸樹は腕時計を見ながら、ベンチから立ち上がった。
「ののちゃん、今日はしーちゃんいないから、どこかにお昼御飯食べに行こう」
「ホント? のの、お子様ランチ食べたい!」
逸樹と希望の会話を聞いて、香織は軽く首をかしげた。
「しーちゃん?」
逸樹が、思わず呟いた香織の方を振り返った。
「ああ……僕の妻です。“紫恵”だから“しーちゃん”。近田さん、手芸教室で妻と会ってますよね?」
香織は手芸教室の紫恵先生を思い浮かべ、驚いて大きく目を見開いた。
「えっ?! 紫恵先生が村岡主任の奥さんってことですか!」
「はい」
「じゃあののちゃんは……」
「ののちゃんは妻の姉の子供です。義姉はシングルマザーで仕事でいつも忙しい人なので、面倒を見られない時はうちで預かってるんです」
「そうなんですか?」
「腹が立つ気持ちはわからなくもないけど……そこは村岡主任の方から謝ってください」
「そうします」
そう言って逸樹は照れくさそうに笑った。
香織はその照れ笑いを不思議な気持ちで見ていた。
奥さんを傷付けてまで逸樹を奪いたいとは思わない。
むしろ、逸樹が奥さんをとても愛していることにホッとした。
愛する人にこんなふうに愛されたらお互いきっと幸せだ。
そんな気がした。
りぃと夢中で遊んでいた希望が、逸樹の方を向いてお腹を押さえた。
「いっくん、ののお腹すいた。グーって鳴ったよ」
「そうか、もうそんな時間なんだな」
逸樹は腕時計を見ながら、ベンチから立ち上がった。
「ののちゃん、今日はしーちゃんいないから、どこかにお昼御飯食べに行こう」
「ホント? のの、お子様ランチ食べたい!」
逸樹と希望の会話を聞いて、香織は軽く首をかしげた。
「しーちゃん?」
逸樹が、思わず呟いた香織の方を振り返った。
「ああ……僕の妻です。“紫恵”だから“しーちゃん”。近田さん、手芸教室で妻と会ってますよね?」
香織は手芸教室の紫恵先生を思い浮かべ、驚いて大きく目を見開いた。
「えっ?! 紫恵先生が村岡主任の奥さんってことですか!」
「はい」
「じゃあののちゃんは……」
「ののちゃんは妻の姉の子供です。義姉はシングルマザーで仕事でいつも忙しい人なので、面倒を見られない時はうちで預かってるんです」
「そうなんですか?」