花盗人も罪になる
「毎日妻がののちゃんを保育所に迎えに行って、一緒に晩御飯を食べてお風呂に入って。それから義姉が迎えに来ます。土曜も夕方くらいまではうちにいますよ」

道理で逸樹がお父さんっぽいはずだ。

逸樹の口から希望は姪だと聞いてはいたが、半分くらいは逸樹と紫恵の子供みたいなものだと香織は思う。

「いっくーん、アイスも食べていい?」

「残さず御飯食べたらね。ニンジンもだよ」

「うん、のの、ぜーんぶ食べるよ!」

希望は嬉しそうに笑って逸樹に飛び付いた。

血の繋がりはなくても、希望は間違いなく逸樹を慕っているし、逸樹もまた希望を大切に可愛がっているのが香織にも伝わってくる。

それはとても微笑ましく、温かい光景だった。

香織は不意に大輔の笑顔を思い浮かべた。

いつかは自分も愛する人とこんな家庭を築きたい。

そしていつか家庭を築く相手は、大輔であって欲しい。

香織は改めてそう思って、逸樹に将来の理想の夫の姿を重ねていたことに気付いた。

やっぱりこのときめきは、逸樹への恋の始まりなんかじゃなかった。

だから職場では意識もしないしドキドキもしないのに、職場を離れた逸樹の優しさや希望を愛しそうに見つめる姿にときめいたのだと香織は一人で納得した。

「村岡主任、ののちゃんがかわいくて仕方ないでしょう?」

「かわいいですよ。ののちゃんは僕と妻にとっては娘同然です」

「奥さんのこと、すごく愛してますよね」

「……ええ、誰よりも愛してますよ」

照れくさそうにそう言った逸樹の笑顔を見て、香織は大輔に会いたいと強く思った。



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