花盗人も罪になる
「そういえば姿が見えないけど、ナナちゃん今日は来てないの?」

「実家に子供預けるって言ってたんだけど、今朝急に一番下の子が熱出して預けられなかったんだ。それで子供と一緒に留守番」

「子供が病気なのに、松山くんはここに来てて大丈夫なの?」

「子供が熱出すなんてしょっちゅうだからな、慣れたもんだよ。俺がいたってなんの役にも立たないし、行ってこいって」

そういえば希望も赤ちゃんの頃はよく熱を出していた。

子供が3人もいると毎日さぞかし大変だろう。

「すごいなぁ……。ナナちゃん、すっかりお母さんなんだねぇ……」

「あいつ、子供が増えるたびにどんどん強くなってさ、今じゃ可愛いげの欠片もないよ」

自分のいないところで逸樹にこんなことを言われていたらイヤだなと、紫恵は少し顔をしかめた。

「松山くん、それはひどいよ。ナナちゃんは松山くんの子供を3人も産んでくれて、頑張って子育てしてるんだよ? もっと大事にしないと」

「別に俺が結婚したいって言ったわけでも、子供欲しいって言ったわけでもないしなー」

まるで他人事のような言い草だ。

それでは松山はナナとの結婚をまるきり望んでいなかったとでもいうのだろうか?

「それ無責任じゃない?」

「なんで? 責任取って結婚して、ちゃんと養ってんじゃん」

松山の言う責任は、紫恵の思う責任の意味とはなんとなく違う気がする。

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