花盗人も罪になる
「それは当たり前のことだと思うけど。松山くんはナナちゃんが好きだから結婚したんじゃないの?」

「別にそういうんじゃないよ」

「え?」

「大学入って付き合いだしたのだって、ナナに強引に押しきられたっていうか? でも顔はまあまあ好みだったし、体の相性は良かったから付き合ってた。そしたら子供ができたから結婚した」

愛情をまったく感じられない松山の態度と言葉に、紫恵は絶句した。

呆れて物も言えないとはこのことだ。

紫恵は返す言葉に困り、しばらく黙ってお酒を飲んだ。

圭はお手洗いに行った帰りに他のグループに引き留められたようで、席に戻って来ない。

春菜と綾乃も別のグループと話し込んでいる。

このまま松山と二人でいるのはなんとなく居心地が悪い。

少しすると、そろそろ一旦お開きにして二次会へ向かおうと幹事が声を掛けた。

紫恵はホッとして席を立った。

松山と離れようと慌てて店の外に出た紫恵は、思いのほか自分が酔っていることに気付いた。

おぼつかない足取りで他のクラスメイトから少し離れた場所で立ち止まった。

少し飲みすぎたかなと思っていたのに、更に松山にすすめられた強めの酒を飲んでしまったので、頭と体がフラフラして、視界がグラグラと不安定に揺れる。

いつの間に近付いたのか、気が付けば紫恵のすぐ真横には松山がピッタリとくっついていた。

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