花盗人も罪になる
松山が紫恵の耳元に顔を近付けた。
「さっきの話だけど……好きの度合いで言えば、俺は今でもナナより紫恵の方が好きだよ」
紫恵は不意に、高校時代に松山の度重なる浮気が原因で別れたことを思い出した。
妻子がいる今も平気でこんなことを言う松山に紫恵は激しい嫌悪感を覚えた。
冗談にしてもほどがある。
「何言ってるの? 冗談やめてよ」
これ以上話したくなくて紫恵がその場を離れようとすると、松山は紫恵の体を抱き寄せた。
「冗談じゃないって。紫恵、もう一度俺と付き合わない?」
「やだ……離して」
紫恵が身をよじってその手から逃れようとしても、松山は更に強い力で紫恵を抱き寄せた。
「お互い結婚してるから、そこは割りきった関係でさ。紫恵もそろそろ結婚生活に飽きて刺激が欲しくなる頃だろ?」
逸樹以外の男になんて触れられたくない。
執拗に紫恵を抱きしめる松山の手の感触と、顔のすぐそばで感じる息遣いに、吐き気がしそうなほどの嫌悪感が込み上げた。
「離して!!」
紫恵は松山の腕の中で、酔って力の入らない体をよじって必死にもがく。
「紫恵、酔っちゃったのかぁ? なんなら、これから二人きりになれる所にでも行く?」
松山は強引に紫恵の手を引いて歩き出した。
「さっきの話だけど……好きの度合いで言えば、俺は今でもナナより紫恵の方が好きだよ」
紫恵は不意に、高校時代に松山の度重なる浮気が原因で別れたことを思い出した。
妻子がいる今も平気でこんなことを言う松山に紫恵は激しい嫌悪感を覚えた。
冗談にしてもほどがある。
「何言ってるの? 冗談やめてよ」
これ以上話したくなくて紫恵がその場を離れようとすると、松山は紫恵の体を抱き寄せた。
「冗談じゃないって。紫恵、もう一度俺と付き合わない?」
「やだ……離して」
紫恵が身をよじってその手から逃れようとしても、松山は更に強い力で紫恵を抱き寄せた。
「お互い結婚してるから、そこは割りきった関係でさ。紫恵もそろそろ結婚生活に飽きて刺激が欲しくなる頃だろ?」
逸樹以外の男になんて触れられたくない。
執拗に紫恵を抱きしめる松山の手の感触と、顔のすぐそばで感じる息遣いに、吐き気がしそうなほどの嫌悪感が込み上げた。
「離して!!」
紫恵は松山の腕の中で、酔って力の入らない体をよじって必死にもがく。
「紫恵、酔っちゃったのかぁ? なんなら、これから二人きりになれる所にでも行く?」
松山は強引に紫恵の手を引いて歩き出した。