花盗人も罪になる
ベッドに入ると、逸樹は紫恵の手を握った。

「ののちゃんは日に日にしっかりしていくね」

「ホント、大きくなったよね」

穏やかに微笑む紫恵の頬に、逸樹は軽くキスをした。

「しーちゃん、今でも子供欲しい?」

「うーん……もう無理してまで作ろうとは思ってないけど、欲しくないと思ったことはないよ。でも私にはいっくんがいるし、ののちゃんもかわいいし……」

「うん、俺もだ。でも……自然にできるなら、それはそれでいいかなって思ってる」

逸樹が手をギュッと握ると、紫恵も逸樹の手を握り返した。

「そうだね……。それが一番だよね」

逸樹はもう片方の手で紫恵の髪を撫でながら、帰り道で円に言われたことを思い出した。

「今日、久しぶりに聞かれたなぁ……。結婚7年目だって言ったら、子供はいるのかって」

前の職場では、子供が欲しくてもなかなかできないことをみんなが知っていて、過剰なくらいそこには触れないようにしていた。

だから同僚やその妻が妊娠や出産をしても、みんなが気を遣って大っぴらに祝ったりしないのが、逸樹には心苦しかった。

まるで腫れ物扱いだと思ったことも一度や二度じゃない。


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