花盗人も罪になる
「私もいっくんを誰にも盗られたくないよ」

「大丈夫。俺は誰かに盗まれそうになったら棘で刺して身を守るから」

「じゃあ私もそうする」

紫恵が笑ってそう言うと、逸樹は自信ありげに笑みを浮かべた。

「しーちゃんを愛でていいのは俺だけ。俺は何がなんでも盗人からしーちゃんを守るよ」

「私はこれからもずっと、枯れないように愛情込めて大切にいっくんを守るね」

逸樹は紫恵の髪を撫でながら、華奢な体を包み込むように抱きしめて優しく唇を重ねた。

「じゃあ……俺だけのかわいいしーちゃん、思いっきり愛でていい?」

「……うん」

逸樹に熱い眼差しで見つめられ求められると、紫恵の肌は上気してほのかに赤く染まり、その先の甘い期待に体の奥が疼く。

二人の唇が吸い寄せられるように重なった。

優しい口付けが次第に熱を帯びて深くて熱いキスに変わる。

逸樹が唇を離すと、紫恵は逸樹の胸元に唇を押し当てて、強く吸った。

逸樹の胸元には紫恵が刻んだ赤いシルシが浮かび上がる。

それは逸樹を他の人には渡さないとアピールしているようにも見えた。

普段ベッドではあまり自己主張をしない紫恵が初めてそんなことをしたので、逸樹は少し驚いている。


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