花盗人も罪になる
待ち人来る
土曜日。
庭で遊んでいたりぃが、さっきから落ち着かない様子で吠えている。
早く散歩に連れて行けと催促しているのかなと思いながら、香織はりぃを散歩に連れて行くために、リードを持って庭に出た。
「りぃ、あんまりうるさくするとご近所迷惑でしょ」
背中を撫でてやっても、りぃは門の方に向かって吠えるのをやめない。
門の前に何があるのかと怪訝に思った香織は、りぃにリードを付けて門のそばへと近付いた。
門の向こうに人影を見つけて、香織は立ち止まる。
「……大輔?」
「香織……久しぶり」
大輔はばつの悪そうな顔をして、軽く右手をあげた。
香織は急いで門を開け、大輔と向かい合った。
「もう会えないかと思った……」
会いたくてもずっと連絡の取れなかった大輔が目の前にいることが信じられなくて、香織の目に涙が溢れた。
大輔は静かに涙を流す香織をためらいがちに抱き寄せる。
「ごめん。連絡できなくて……」
「心配したんだからね……」
寄り添う二人の足元で、りぃが吠えた。
香織と大輔は二人して顔を見合わせ、少し照れ笑いを浮かべた。
「もしかして散歩に出掛けるとこだった?」
「あ、うん……」
大輔は香織の頬に手を添えて、親指で涙を拭った。
「じゃあ……歩きながら話そうか」