花盗人も罪になる
りぃを連れて、いつもの公園に向かってゆっくりと並んで歩いた。

久しぶりに会うせいか、二人の間にできた距離は以前に比べると、ほんの少しぎこちない。

「ねぇ……なんでずっと連絡くれなかったの?」

「うん……話せば長くなるんだけど……」


大輔が繁忙期の疲労で体調を崩し、香織と会うのを先送りにして1週間ほど経った頃。

海外工場管理の担当者が過労で倒れて海外出張の出発日前夜に入院することになり、その代役を大輔が急遽引き受けることになった。

早朝に電話を受けた大輔は、着替えやパスポートなど必要最低限の物だけをバッグに詰め、空港に向かう前に仕事に必要な物を取りに会社に立ち寄った。

飛行機の時間に間に合うだろうかと焦っていた大輔は、引き出しの中から必要な物をバッグに移した際に、うっかりスマホを引き出しの中に入れたことには気付かずに引き出しの鍵をしめ、そのまま出張先へ向かった。

海外でも使える仕事用の携帯電話を持っていたので仕事に支障はなかったが、スマホを引き出しの中に忘れてしまったので、海外にいる間は連絡先がわからず、香織に連絡することはできなかった。


1か月後、ようやく海外出張を終えて帰国したのは雨が降る夜だった。

大輔は空港から会社に立ち寄って仕事の荷物を置き、スマホを持って会社を出た。

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