花盗人も罪になる
「それじゃ絶対逃げられないね」

「当たり前だ、絶対逃がさん! っていうかそれ以前に、俺以外の男なんか好きになるな。しーちゃんは一生俺だけのしーちゃんでいろよ」

逸樹は紫恵が思っていたより嫉妬心も独占欲も強いらしい。

逸樹が紫恵を信用していないからそう言うわけではないと紫恵はわかっている。

だから、それだけ逸樹に愛されているのだと紫恵は嬉しくなる。

「うん、そうだよ。いっくんも他の人なんか好きにならないでね」

「そんなやんわりした言い方でいいの?俺はもっとしーちゃんに束縛されたいんだけど」

予想外の逸樹の言葉に、紫恵は首をかしげた。

「いっくんって変わってるね……。男の人は束縛って一番嫌いなんじゃないの?」

「俺はしーちゃんの愛でがんじがらめにされたい。身動き取れないくらいに」

逸樹の愛は、紫恵が思っていたより相当激しいようだ。

紫恵を束縛するだけでなく、紫恵に束縛されたいと言う逸樹を、この上なく愛しいと紫恵は思う。

「がんじがらめに……?じゃあ……絶対に逃げられないように、いっくんの全部を私で包み込んじゃおうかな」

紫恵は華奢な両手で逸樹の大きな体をギュッと抱きしめた。

「それすごい幸せだ。ずっとしーちゃんの中にいられる」

「いっくんは一生私だけのいっくん。誰にも渡さないからね」

珍しく独占欲をあらわにした紫恵を、逸樹は嬉しそうに抱きしめた。

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