花盗人も罪になる
「俺がしーちゃんだけのものだって、確かめてよ」

「ん……? じゃあ……確かめちゃおうかな……」

紫恵は少し照れくさそうにそう言って、逸樹の唇に柔らかい唇を重ねた。

いつもは受け身になっている紫恵がその手で逸樹の体に触れ、素肌に舌と唇を這わせた。

あまり上手とは言えない、ぎこちない紫恵の愛撫に、逸樹は少しくすぐったそうに身を任せている。

慣れない手つきがもどかしくて、逸樹が紫恵の背中に手を伸ばしかけた時、紫恵が少し顔を上げて熱を帯びた目で逸樹を見つめた。

「いっくんは……確かめてくれないの?」

逸樹を求める紫恵の表情がいつになく艶かしく色っぽい。

逸樹は身体中の血が熱くなるのを感じた。

「もう我慢できない。俺にも確かめさせて」

「うん……確かめて」

お互いの愛を何度確かめあってもきっと足りない。

愛してるともっと伝えたくて、もっともっと愛して欲しくて。

言葉で、態度で、体温で、体で。

二人は自分の持てるすべてを使って貪欲に愛を求め確かめ合う。

他の者にとってはどうなのかはわからないけれど、それが二人にとっては自然な愛し方。

愛し合う二人だけの幸せのかたちであることには違いない。

自分の弱さもずるさも、何もかもすべてを委ねられる相手がいて、自分もまた相手のすべてを受け入れる。

この先もずっとお互いにとって唯一無二の存在でありたい。

逸樹と紫恵はそんな想いを込めるように大切に抱き合しめ合って、甘い余韻と温もりの中で心地よい眠りについた。



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