花盗人も罪になる
「いるんだ……」

「うん……あ、でもその人、早くに結婚して子供が3人もいるんだって。いいパパらしいよ」

「ふーん……。いいパパねぇ……」

いいパパをしている男だって、妻以外の女に惚れないとは言い切れない。

ましてや若かりし頃に青春時代を共にした元カノだったら尚更だ。

逸樹はキッチンに立つ紫恵を後ろから抱きしめて、その髪に頬をすり寄せた。

「なんかものすごく心配になってきた……」

「大丈夫だよ。その人の奥さんも同じクラスだったから。高校出て同じ大学に通ってる時に付き合いだして、すぐに子供ができて結婚したんだって」

今時できちゃった婚なんて珍しくもないが、そんな若い時に責任を取るような形で結婚した男に限って、同窓会なんかで元カノに会ったりすると羽目を外しやすいように逸樹は思う。

「余計に心配だ……」

逸樹は更に強く紫恵を抱きしめた。

「大丈夫、昨日も言ったでしょ? 私はいっくんしか考えられないって」

「ホントに?」

「ホント。いっくんよりカッコいい人なんて、私にはいないよ?」

「じゃあ……俺を安心させてよ」

いつになく甘えた様子の逸樹に、紫恵は笑ってキスをした。

「わかった、でも御飯が先ね」


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