花盗人も罪になる
夕飯は昨日のカレーを使ったドリアと、冷蔵庫にあった野菜で作ったスープ。

なんてことのない気取らない日常が、二人には心地よい。

今更背伸びをして大人ぶる必要もなければ、無理をしてうわべを飾ることもない。


夕飯を終える頃、逸樹が言った。

「しーちゃん、御飯が済んだら、久しぶりに一緒にお風呂入ろ」

「いいけど……。今日のいっくんは甘えたさんだね」

「いいの、しーちゃんは俺だけのしーちゃんだから」

紫恵は嬉しそうに笑ってうなずいた。


逸樹がどんなに甘えても、紫恵はイヤな顔ひとつせず、穏やかに笑ってそれを受け止めてくれる。

外では見せない素顔をさらけ出せる相手がいることは、幸せだと逸樹は思った。





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