花盗人も罪になる
「男って甘えたい生き物だからねぇ。子供ができると奥さんの愛情独り占めってわけにはいかなくなるから、足りなくなった分の愛情を他の女で補うのかなぁ」

「あれでしょ? 昔はかわいかったとか痩せてたとか、結婚前の若かった頃のままの姿をやたら求めるよね。それで若い女に興味がいくのよ。自分も同じように歳取ってる自覚がないんじゃない?」

「そりゃあね……子供産んだら骨盤緩んでどんどん太りやすくなって……。芸能人でもセレブマダムでもないし、自分のことなんか二の次になるわ」

「痛い思いして旦那の子を産んで、睡眠時間削って育ててさ……。子供の発達なんかで悩んだりするのはいつも私ばっかりなのに、旦那は平気で私に、太っただの老けただの……なんであんなことが言えるんだろ?」

どうやら、夫の子供を産んで育てている妻への理解やいたわりがないことが、彼女たちの一番の不満のようだ。

そんな会話を聞きながら、紫恵は逸樹の言葉を思い出していた。


『もし子供がいても、俺はちゃんとしーちゃんを大事にするよ?』


子供がいた経験がないから、実際にそうなった時にどうなるのかはわからない。

もしかしたら、やっぱり子供が欲しいから離婚して欲しいと逸樹が言い出したら……と不安に思ったことも一度や二度じゃない。

それでも逸樹に限って浮気なんて有り得ない、ずっとお互いを大事にして一緒に生きていこうと約束したんだからと、紫恵は自分に言い聞かせた。


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