花盗人も罪になる
偶然の出会い
昼休み。
いつものカフェで食後のコーヒーを飲んでいると、カップをソーサーの上に置いて円がポツリと呟いた。
「どうやって近付こうかな……」
なんのことかと香織は首をかしげた。
「近付こうかなって……何に?」
「ん?狙ってる人がいるんだ」
まさかその人と不倫の関係になろうとしているのでは?
香織の胸に少なからず不安がよぎる。
「どんな人なの?」
「歳上で優しくて仕事ができて、背が高くてカッコいいの」
「ふーん……」
既婚未婚問わず、社内にもそれらしい人は何人かいる。
円が狙っているのが社内の人間とは限らない。
香織は、円がおかしな気を起こさなければいいけど……と思いながらコーヒーカップに口をつけた。