花盗人も罪になる
「自分は良くても、そのせいで傷つく人が確実にいるんだよ。それにもしバレて裁判沙汰にでもなったらどうするの?」

「そんなヘマはしない」

どこからその自信が湧いてくるのか。

「相変わらず香織は小心者ね」

香織が真剣に忠告しているのに、円は笑って聞き流した。

「不倫だって恋愛よ? 好きになった人にたまたま妻がいたってだけで、相手もその気になったなら夫をちゃんと繋ぎ止めておけない妻が悪いんじゃない」

なんて自分勝手な見解だ。

自分のことは棚にあげて、不倫の責任は相手の妻にあるという考えには呆れてしまう。

「ああ、そう……」

香織は円には何を言っても無駄のようだと思いながら食事を進めた。



昼休みを終えた午後の商品管理課オフィス。

香織はパソコンに向かい、店舗での新商品の在庫数とここ1週間の販売実績を確認しながら、工場への発注作業をしていた。

隣の席では円がイライラしながら商品の発注伝票を確認している。



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