花盗人も罪になる
『しーちゃん』はこちらに駆け寄ってきて、『のの』のほっぺたを両手で挟み込んだ。

「ののちゃん! 勝手に離れちゃダメでしょ?」

「だってぇ……チョコ欲しかったもん」

さっきまであんなにしっかりしていたのに、急に甘えたそぶりを見せる『のの』がかわいくて香織は思わず微笑んだ。

「ののちゃん、しーちゃんが見つかって良かったね」

「うん! かおちゃん、ありがとう」

「すみません、お手数お掛けしました」

『しーちゃん』は香織に深々と頭を下げた。

「いえ……たいしたことは。それじゃあね、ののちゃん。もう迷子になっちゃダメだよ」

「うん、バイバイ!」

『しーちゃん』に会えてよほど安心したのか『のの』はニコニコ笑いながら香織に手を振った。

『しーちゃん』はまた頭を下げた。

なんだか微笑ましい二人だったなと思いながら、香織は夕飯用の総菜を買ってスーパーを後にした。




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