花盗人も罪になる
円はいつものように逸樹と一緒に会社を出た。

駅までの道のりを、円は落ち着かない様子で時々辺りを見回して見せた。

逸樹は歩きながら、円の様子がいつもと違う事に気が付いた。

「北見さん、どうかしましたか?」

「いえ、あの……ちょっと……」

円は曖昧な返事をして、また辺りを気にしている。

「何か気になります?」

「あの……実はちょっと、相談に乗っていただきたい事が……」

声のトーンを低くする円に、逸樹は首をかしげた。

「相談……ですか?」

「はい、でもここじゃちょっと……」

人に聞かれてはまずいような悩みがあるのか、それともよほど切羽詰まっているのかと逸樹は考える。

部下から直接相談したいと言われているのだから、無視するわけにもいかない。

「そこのカフェでいいですか?」

「はい、ありがとうございます!」

円はうまくいったと思いながら、少し安心したように笑って見せた。


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