花盗人も罪になる
もしも夫が浮気をしたら



逸樹が仕事に出掛けたあと、紫恵は朝食の後片付けや洗濯、部屋の掃除を済ませて、手芸教室に行くために家を出た。

その途中で、逸樹からクリーニングに出すよう頼まれたスーツを持って出るのを忘れてしまったことを思い出した。

家までスーツを取りに戻っていては手芸教室の始まる時間に間に合わなくなる。

あとで希望を迎えに行くついでにクリーニングに出そうと思いながら、紫恵はそのまま手芸教室に向かった。



「やっぱり浮気だったわ」

生徒の真理子さんが赤いバラを刺繍しながら呟いた。

他の生徒たちは刺繍する手を一瞬止めて、驚いた顔をしている。

「こそこそメールしてるのもそうだけど……帰りはいつも遅いし、やたら休日出勤とか出張が増えて怪しいと思ってはいたけどね」

「何か証拠つかんだの?」

「スーツのポケットから、見たこともないラブホテルの会員カードが出てきた。あと、出張で金沢に行ってたはずの日に、家から車で30分の場所で二人で食事したレシートが2枚」

「出張に行くふりして女の所に泊まってたってこと?」

「でしょうね。仕事が押して新幹線の時間ギリギリになったから、お土産買う時間がなかったんだーなんて言ってさ、実際は行ってないんだから買えるわけないっての」

真理子さんは呆れたようにそう言った。


< 49 / 181 >

この作品をシェア

pagetop