花盗人も罪になる
ずいぶん生々しい話だ。

夫が別の女性とラブホテルに行ったり、出張だと嘘をついてその相手と一緒にいたなんて、妻としてはとても許せることじゃない。

「それで、どうするの?離婚?」

「離婚なんてしたってね……。うち、来年は次男が高校受験で、再来年は長男が大学受験なの。次男はサッカーの強い私学の高校に行きたいんだって」

「経済的にそれは大変ねぇ」

「でしょ?働くって言ったって私ももういい歳だから、そう簡単に仕事見つからないだろうし……離婚しても苦しくなるだけでなんの得にもならないし。親のせいで子供に負担はかけたくないからね」

「じゃあ夫の浮気は見て見ぬふり?」

「腹は立つけど、素直に謝って相手と別れるなら今回だけは許してやろうかと思ってる」

紫恵は真理子さんたちの話を聞きながら、もし逸樹が浮気したら自分はどうするだろうと考える。

自分たちの間には子供はいない。

結婚生活を続けるにしても『子供のために』という選択肢は最初からない。

一度でも他の誰かを好きになって体の関係を持った人を、それまでと変わらず夫として愛せるだろうか?

また浮気されるんじゃないかと不安になったり夫の行動をいちいち疑ったりしてしまうのではないか?

もし浮気じゃなくて本気だったら、その相手と結婚して子供が欲しいから別れてくれと言われるかもしれない。

逸樹が浮気をしているわけでもないのに、そんな不安がふと頭をよぎる。

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