花盗人も罪になる
「ホント?嬉しいな。今日は二人きりでのんびりするんだもんね」

紫恵がそう言うと、逸樹はイタズラっぽく笑って紫恵の腕を引いて抱き寄せた。

「うーん……やっぱり……思いっきりイチャイチャしよっ!」

小柄な紫恵は逸樹の腕の中にすっぽりと収まり驚いて目を丸くしている。

「いっくん?!先に御飯食べないと……お腹空いてるでしょ?」

逸樹は慌てる紫恵を愛しそうに見つめて頬に軽く口付けた。

「うん。でも今は御飯より、しーちゃん食べたい」

まるで若いカップルのようだと、紫恵は照れて顔を真っ赤にした。

「やだ、いっくん……。そんなこと言われるとなんか……恥ずかしいよ……」

紫恵の赤くなった頬を、逸樹は唇で優しくついばんだ。

「照れちゃって、しーちゃんホントかわいい。やっぱり今すぐここで食べちゃおう」

クスクス笑いながら抱きしめ合って、何度も優しくキスをした。

知り尽くしたお互いの唇の柔らかさや、触れ合う肌の温もりに安心する。

「しーちゃん、愛してるよ」

結婚して6年以上経った今も、逸樹の言葉も紫恵に触れる手も、恋人の頃と変わらず甘くて優しい。

身も心も温かさでいっぱいに満たして、こんなにも愛して大事にしてくれるのは逸樹しかいないと紫恵は思う。

紫恵もまた、そんな逸樹を誰よりも愛しているし、一生大事にしたいと思う。

「いっくん……私も……愛してる……」




< 54 / 181 >

この作品をシェア

pagetop