花盗人も罪になる
「ふわふわー!かおちゃんが作ったの?」

「そうだよ。ののちゃんにあげる。ちっちゃいりぃとも仲良くしてくれる?」

「うん、仲良くする!」

希望の嬉しそうな笑顔につられて、香織も笑った。

「近田さんすみません。これ、ホントにいただいてもいいんですか?」

逸樹は申し訳なさそうにしている。

「いいんですよ。私がののちゃんにあげたくて作ったんですから。こんなに喜んでもらえて嬉しいです」

「ありがとうございます。ののちゃんもちゃんとお礼言って」

逸樹がポンポンと頭を優しく叩くと、希望は香織に向かってペコリと頭を下げた。

「かおちゃん、ありがとう!」

「どういたしまして」

「良かったね、ののちゃん」

希望の頭を撫でる逸樹の優しい表情に、香織の鼓動がまた速くなった。

香織は不可解な胸の高鳴りに焦ってしまう。

その時、ポツリと冷たい水滴が肌に落ちるのを感じた。

「あっ、雨……。本降りになると大変なので、私はこれで……」

「そうですね。僕たちも帰ります。ありがとうございました」

「かおちゃんありがとう!バイバーイ!」

「うん、またね!」

香織は焦っているのを雨のせいにして、その場で二人と別れた。



妻のいる人にときめくなんて、有り得ない。



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