花盗人も罪になる
揺るぎない愛情
逸樹と希望が公園から帰ってきて昼食を済ませた後、紫恵がキッチンで後片付けをしていると希望がリュックサックからお気に入りの猫のぬいぐるみを引っ張り出した。
そしておもちゃ箱をひっくり返し、おままごとセットをカチャカチャと並べ始めた。
雨が降りだして外では遊べないから、お人形とままごとでもするつもりなのだろう。
希望のごっこ遊びはいつも、大人が思い付かないような子供らしい設定だったり、そうかと思えば時々ドキッとさせられるような子供らしくない台詞が出てきたりする。
子供というのは大人が思っているより大人をよく見ているようだ。
「ミミちゃん、りぃちゃん、お腹すいたでしょう。ごはんにしましょうね。にゃーん、お腹すいたにゃん。今日の晩御飯はりぃちゃんの大好きなカレーよ。やったー、ののちゃんのカレー美味しいからだーい好きだワン」
希望は一人で何役もこなしているらしい。
ミミちゃんはいつも希望が可愛がっている猫のぬいぐるみだと知っているが、りぃちゃんは紫恵が初めて聞く名前だった。
しかしどこかで聞いたようなやり取りだ。
「ミミちゃん、ニンジンも食べましょうね。えーん、ニンジン嫌いだにゃん。嫌いなんて言うとニンジンさんが悲しいって泣いちゃうよ」
なるほど、これは紫恵と希望のいつものやり取りだ。