花盗人も罪になる
逸樹は紫恵の体をクルッと自分の方に向けて、強く抱きしめた。

「いっくん……ののちゃんに見られちゃう……」

「ののちゃん寝ちゃったから、こんなことしても大丈夫」

そう言うと逸樹は紫恵の頭を引き寄せ、唇をついばむような甘いキスをした。

長いキスの後、逸樹は紫恵を抱きしめながら耳元で囁いた。

「俺が好きなのはしーちゃんだけだよ。それも忘れないで」




希望が昼寝から目覚めて間もなく、仕事を終えた心咲が希望を迎えに来た。

お茶を飲みながら少し話した後、心咲が希望を連れて帰り二人きりになると、逸樹は紫恵を手招きした。

紫恵がそばに行くと逸樹は紫恵を抱き寄せた。

「明日から金曜の夜まで、出張でしーちゃんに会えない」

「うん……そうだね」

「だから今日は、しーちゃんとずっとくっついてたい」

昔から逸樹は二人きりになると紫恵に思いきり甘えるし、紫恵のことも思いきり甘やかしてくれる。

そんな甘くて優しい逸樹がたまらなく好きだと紫恵は思う。

「いっくんの甘えんぼ」

紫恵が笑いながらそう言うと、逸樹は長い腕の中に紫恵をすっぽり収めて唇にキスをした。

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