花盗人も罪になる
逸樹たちはホテルの近くの定食屋で夕飯を済ませた後、飯塚主任の案内でその店へ向かった。

きらびやかなネオンの灯る夜の歓楽街は、今日が平日であるにもかかわらず賑わっている。

そういえばオススメの店がどんな店なのか、まだ飯塚主任から詳しくは聞いていない。

飯塚主任が立ち止まり、やけにけばけばしいピンク色の看板を指差した。

「ほら、ここ。めっちゃかわいい子がすげーサービスしてくれるってよ!」

そこには“ランジェリーパブ”の文字。

逸樹は顔をひきつらせた。

店先でやたらと肌を露出して笑顔を振り撒いていた二人の若い女の子が、逸樹たち3人に気付き近付いてくる。

「おにいさんたち、めっちゃかっこええなぁ。サービスするし、うちの店で遊んでってぇ」

二人の女の子のうちの一人が、逸樹の腕に甘えるようにして腕を絡め豊かな胸を押し当てた。

むせ返りそうなほどの強い香水の匂いに吐き気がする。

逸樹は慌ててその腕を振りほどき、来た道を引き返そうとした。

「村岡、どこに行くんだよ」

今すぐその場を離れたいのに、飯塚主任に腕を掴まれ引き戻されてしまう。

「えっ……いや……僕は遠慮しときます」

「なんでだよ、いいじゃん。普段こんな店なかなか行けないだろ?」

「嫁もいないことだし、たまには若い子相手に羽伸ばそうぜ」

「イヤですよ、こんな店!」

かたくなに入店を拒む逸樹を、飯塚主任と岡本主任が不思議そうに見ている。

「かたいこと言うなよー。別に浮気とかじゃないんだしさぁ。嫁ばっかりじゃ飽きるだろ?」

「飽きませんよ、僕は嫁以外の女にまったく興味ありませんから!」

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